010918 S. Fushinobu; 031006 050727 061019 071204 080908 加筆
私は結晶学は詳しくないので、あまり書いちゃうとボロが出ると思いますが、CCP4のtwinningに関する文章 、 Fam & YeatesのIntroduction to Hemihedral Twinning 、 CCP4 wikiのTwinningの項 によると、ツインの結晶ってのは、2種類あって、
後者はmerohedralと呼ばれていて、2つまたはそれ以上の『ドメイン(結晶中の、何らかの単位、みたいなもの?)』が、異なる向きで、完全に重なって成長してしまった場合。その中でも、2つのドメインのみからなる特殊な場合(高分子の場合はこれが一般的らしい)はhemihedralと呼ばれているそうです。まぁ普段はhemihedralとはあまり言わないで、ひっくるめてmerohedral twinと言われているみたいです。
どうしても構造が解けない場合、merohedral twinの可能性を疑ってみる必要があるでしょう。
truncateしたとき(ccp4iでは主に"Import Merged Data"や"Convert Intnsities to SFs"でやりますね)にView Log Graphsでグラフを見て、Cumulative distribution plotのacentric反射がこんな感じでsigmoidalな場合には、twinらしい。(詳しくはman truncateを見て下さい)また、Acentric Moments of ....も見て下さい。3つのTableでExpected valueとPerfect Twinの値が書いてあると思います。例えば、2nd momentが2付近だったら普通、1.5付近だったらperfect Twinということらしいです。(追記:Centric Moments of E for kの中の値もチェック。4th Momentは3なら普通、2ならPerfect Twin。)最近(07年10月)、Eleanor J. Dodsonのccp4bbでの発言によると、cumlative intensityは弱い反射を正しく見積もることを前提とするので、integrationの手法に多少影響を受けやすいそうです。彼女は"4th moment of E - 2nd moment of I"が好きで、pseudo-translation(疑似並進)がない場合にはツインの兆候として信頼が置けるそうな。その他、twinの兆候のリストも参考に。
Hemihedral twinの2つのドメインの重なりの比(twin fraction)は0〜0.5で表されます。hemihedral twinは、CCP4のdetwinなどを使って、重なってしまった反射をdeconvoluteすることにより、元の反射に分けることができます。ただし、Eleanor J. Dodsonのccp4bbでの発言によると、deconvoluteできるtwin fractionはせいぜい0.35程度までで、これが0.5(つまりPerfect Twin)、もしくはこれに近い値の場合にはできないらしい。
detwinは、truncateの前に行います。OPERATORをLOOKUP TABLESを参考にして入力し、TWIN_FRACTIONを色々入れてみてtruncateの出力を見ながら正しい値を決めるのが普通の使い方らしい。(詳しくはman detwinを見て下さい)
Twinかどうかを判定してくれるサーバーもあります。
The Merohedral Crystal Twinning Server (by Todd Yeates and Barry Fam at UCLA-DOE)
反射ファイルのXPLORフォーマットへの変換のやりかた: 1. Reflection Data Utilities→Convert from MTZでまず反射ファイル(Fの入っているmtz)を変換HKL outにfoo.hkl (任意) format はUSER Output Fortran formatに'(3i4,1f10.2)' Add Columnして、Label columnにF, processed as "generic real"2. 以下の1行をxplor.awkとして保存(%2dや%7.2fの数字は場合によっては%3dや%8.2fとかに変える必要があるかも。"¥"(Yen Mark)="\"(Back Slash)にも注意){printf("INDEX %2d %2d %2d FOBS %7.2f\n", $1, $2, $3, $4)}3. 以下のようなコマンドでファイル変換(awkの代わりにgawkやnawkを使ってもよいはず)awk -f xplor.awk < foo.hkl > foo.xplor
あと、CNSにdetect_twin.inp など、一連のtwin関連のスクリプトがあります。
文献: Yates, Y. O., Methods Enzymol., 276, 344-358, 1997
素晴らしい内容なのでぜひ読むべし。ここに載ってた2つの有用な表を転載します。
True point groupa |
Twin Operation |
Reflection related to hkl |
3 |
2 along a, b |
h, -h-k, -l |
2 along a*, b* |
h+k, -k, -l | |
2 along c |
-h, -k, l | |
4 |
2 along a, b, a*, b* |
h, -k, -l |
6 |
2 along a, b, a*, b* |
h, -h-k, -l |
321 |
2 along c, a*, b* |
-h, -k, l |
312 |
2 along c, a, b |
-h, -k, l |
23 |
4 along a, b, c |
k, -h, l |
True symmetry point group (Laue group) |
Twin Operation(s) |
Apparent symmetry point group (Laue group) |
3 (3) |
2 along a, b |
321 (3m1) |
2 along a*, b* |
312 (31m) | |
2 along c |
6 (6/m) | |
2 along c, a b, a*, b* |
622 (6/mmm) | |
4 (4/m) |
2 along a, b |
422 (4/mmm) |
6 (6/m) |
2 along a, b, a*, b* |
622 (6/mmm) |
321 (3m1) |
2 along c, a*, b* |
622 (6/mmm) |
312 (31m) |
2 along c, a, b |
622 (6/mmm) |
23 (m3) |
4 along a, b, c |
432 (m3m) |
つまり、P622だと思ってたら、P6やP312やP321やP3のperfect twinだったりする場合があるってことですね。
上記の表には載ってませんが、見掛け上monoclinic (C2)の場合にも、a軸の長さとa軸+c軸のベクトルの長さが同じ場合にtwinになる可能性があるようです。Truncateの段階でtwinの可能性を指摘する警告が出るのだとか。
実例:本当はP21なのにmerohedral twinの疑似2回軸のためにC2221に見えてしまう例(Ban et al., Nature 400, 841-847,1999)。モノクリの格子が2回軸のNCSを持っていて疑似222対称を示す場合には、ツインで関係付けられる反射が強く相関するので、それらの反射を平均化した場合にも反射強度の分布には影響が出ず、ツイン解析がこける、つまり、ツインであることを見つけるのがほぼ不可能なんだとか。ただし、疑似対称が結晶学的対称からわずかに外れている場合には、若干問題が残るものの、構造を解くことができるかも知れません。真の結晶学的対称から疑似対称が外れている部分以外では、大体正しい最終構造が得られるでしょう。(以上、ccp4bbでのDr. Bart Hazesの書き込みを丸写ししてます。後半は、ちょっと自信無し。)