糖鎖を精密化
100525 S. Fushinobu (111129 modified)
これみたいな、ハイマンノース(オリゴマンノース)型のN-リンク糖鎖がついている構造をRefmac5とcootで精密化する時のtips。Refmac5(5.6.0117), coot (0.6.2), ccp4 (6.2.0)です。他のタイプの糖鎖にも応用可能(なはず)。糖鎖について知るにはGlycoconjugate Data BankとかglycoSCIENCES.DEがよい。
Refmac5で===> Error: New ligand has been encountered. Stopping now、とかで止まるのは原因がはっきり書かれていないことが多くて厄介ですよね。。まずはWarningも含めてlog fileをよく見るのが基本ですが。。Monomer libraryの内容がダメな場合が多いのですが、"link is found (not be used)"というWarningが出ている場合もあります。リガンドの糖鎖の場合には、そこそこ近い原子間に勝手にlinkを作った.cifファイルを書き出して終わる、ということがあります。log fileと書き出した.cifファイルを見ればどこに linkを作ろうとしたか分かります。Cootでmonomerを置く際に、変なところにリンクができないようにきっちり置けばよいわけですが、これも結構大変だったりします。ですので。。
Monomer libraryを用意
- $CCP4/lib/data/monomer/(頭文字)/ 下にそれぞれのモノマーのcifファイルがあるわけですが、MANとBMAに問題あり(NAGは中身は問題なしだがファイル名が問題あり)。
- MANは本来α-D-manno(pyrano)seに与えられたIDだがここにあるのはβ-D-mannnoseの内容が入ったMAN-b-D.cif。
- BMA.cifの中身はchemical restrainが空っぽ。本来はこっちがβ-D-mannnose。
- 対処法:MAN-b-D.cifをコピーしてきてBMA.cifに名前を変え、geditなどのエディタで"MAN-b-D"を"BMA"に全部置換。
- MAN-b-D.cifをコピーしてきてMAN.cifに名前を変え、geditなどのエディタで"MAN-b-D"を"MAN"に全部置換。後ろの方にある" MAN chir_05 C1 O1 O5 C2 positiv"のpositivをnegativに書き換える。
- NAG-b-D.cifをコピーしてきてNAG.cifに名前を変え、geditなどのエディタで"NAG-b-D"を"NAG"に全部置換。
- その他、.cifの内容がダメな場合はここに書いているように、PRODRG server(とHic-Up)の助けを借りて作る。
リンク(結合距離)入りCIFファイルを作る
- ccp4iのMerge Monomer Librariesで、自分で作った複数の.cifファイルを1つにまとめる。
- その.cifファイルに、以下の編集を施す。
- "# --- LIST OF MONOMERS ---" と"# --- DESCRIPTION OF MONOMERS ---"の間にこんなのを入れる。
- ファイルの最後にこんなのを入れる。
- 上記の例にないタイプの結合がある場合には随時追加する。
- CIFファイルの例はこちら。
Cootでmonomerを置く
- ここに書いているように、Get Monomerで入れて、hydrogen atomsを消し、Translate/Rotateで大体の場所に入れて、Rigid Bodyで合わせる。
- 糖がリンクしている場所で、消すのは、通常O1原子の方。
- 発現宿主が作る糖鎖の構造をよく調べて、変な糖鎖をつけないように。ちなみに、N-リンク糖鎖の場合は、(NAG)2直後の枝分れの根元のmannoseだけがβ-mannnose(BMA)なので注意。
- File Import → CIF dictionaryで糖の.cifファイルを読みこめば、Real Space Refine Zoneできる。上記のリンク入りファイルを読みこめば糖-糖の結合距離も保ったままRSRZできるはず。
- Cootは残基番号が連続していないと結合を作ってくれないようなので,分岐のある糖鎖などは,O原子とC1原子の距離を適当に(1.4Å前後)設定しないと後のRefmacで結合距離を保ってくれない場合がある(近すぎても遠すぎてもダメ?)。CootのRotate Translateで糖を選び,Ctrlキーを押しながらC1原子(あるいはO原子)だけをドラッグすることが可能。
- 糖のリングのコンフォメーションを変えないように注意。通常の糖鎖の糖は4C1 (chair) 以外のコンフォメーションをとることはまずない(と思う)。
Refmac5 (ccp4)で精密化
- Refmac5するときに上記のリンク(結合距離)入り.cifファイルを読み込む。
- Refmac5のSetup Geometric Restrainsの中の、Make links between: Sugar-sugar or sugar-peptide ifを"defined in file or residues are close"に変える。自分の.cifで定義した結合に加えてRefmac5が持つdictionaryのALPHA1-2などが使われていることをlogfileを見て確認。上記のCootで置くときに間違った場所に置くと(距離が近い原子があると;2.0Åより近いと?)変な場所に結合ができてしまうので注意。
- Checking against dictionary:をCheck all monomers against Refmac's dictionary descriptionにしたほうがよい?
- FAILEDになると,ライブラリにない結合を書き加えた.cifファイルを書きだすことがある。これを使ってもよいが,変なところに結合を作ってないか中身(data_link_listの項)をよくチェックしてから使おう。
- Refinement直前と直後のPDBファイルをCootで読み込み,重ねあわせた状態で糖鎖の部分をよく見る。C-O/C-N結合は約1.4Åになっているか,変な結合になっていないかチェックする。
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