Rでピンポン機構のフィッティング
181128 S. Fushinobu
二基質(bi-substrate)反応におけるピンポン機構(Ping-Pongあるいはsubstituted-enzyme mechanismとも呼ばれる)のデータを、Rのnls(Nonlinear Least Squares)コマンドを使って非線形回帰分析フィッティングするやり方を解説します。
競争阻害の時のスクリプトをもとに拡張しました。x軸を2つの基質で別々のプロットとして描き、nlsで算出されたパラメータで両逆数プロットを描くのも一気にできるようにしたのでぜひ使ってみてくださいな。
- Kinetic data: 1つ目の基質の濃度(conc1)、2つ目の基質の濃度(conc2)を振って初速度データ(rate)を集めます
- 二基質反応の場合は両方の基質濃度を振った両逆数プロットを描いて機構を判定します
- 両逆数プロットが平行移動すればピンポン機構、傾きが変化すれば逐次(sequentialあるいはcompulsory-order ternary-complex mechanismとも呼ばれる)機構となります。ちなみに逐次機構にはさらにorderedとrandom(またはrapid equilibrium)がありそこまで判定するには生成物(反応産物)阻害のパターンを見る必要がありますが詳細は教科書などを参照してください。
- csvファイルにして保存
- テキストエディタなどでピンポン機構用のスクリプトを用意、上の方を書き換える。回帰分析をするので初期値は大事。モノクロモードでも描けるようにしてます。
- Rにコピペ
- RのコンソールにVmaxとそれぞれの基質のKmのEstimate, Std. Err.などが出てくる
- おまけ:ピンポンか逐次かの判定に使える(と思われる)スクリプトも作ってみた
- 逐次機構の一般式は以下のとおりです。これで回帰してKiAが0とみなせそうならばピンポンと判断できます。
- v = Vmax[A][B] / (KiAKmB + KmB[A] + KmA[B] + [A][B])
- コンソールで出てくるsummaryでKiA(またはKiB)の数字を確認してみてください。サンプルデータは高濃度で多少基質阻害が出ていますが明らかにピンポンです。
- スクリプト序盤の"AorB"でどっちの基質のKiの計算を表示するか変えられます。式としては対称性がありますし、大した違いはないと思いますが。
Reference: Analyzing Enzyme Kinetic Data Using the Powerful Statistical Capabilities of R
Carly Huitema, Geoff P Horsman
doi: https://doi.org/10.1101/316588