アミド結合形成を触媒するアデニル化酵素VinM


アデニル化酵素は、非リボソームペプチド化合物やポリケタイド化合物の生合成に関わる酵素である。アデニル化酵素は厳密な基質特異性を有しており、化合物に組み込まれるアミノ酸ユニットの種類を決定づけている。



一般的なアデニル化酵素は、キャリアータンパク質CPのホスホパンテテイン鎖チオール基にアミノ酸を受け渡し、チオエステル結合を形成する。一方で、マクロラクタム抗生物質ビセニスタチン生合成に関わるアデニル化酵素VinMは、一般的なアデニル化酵素とは異なり、CPであるVinL上に載せられたアミノ酸ユニットとの間でアミド結合を形成する特異な反応性を示す。

なぜVinMがアミド結合形成を触媒するのかについて明らかにするためには、VinMがVinLと相互作用した複合体の状態で構造決定する必要がある。VinMとVinLの間の相互作用は弱いため、そのままでは複合体の構造解析は困難である。そこで、我々がこれまでに開発してきたクロスリンク反応を用いた手法によりVinM-VinL複合体の構造解析を検討した。



まず、クロスリンク反応用プローブ分子C6Brを合成し、これでVinLを修飾することによって、アクセプター基質である3-アミノイソブチリル-VinLの構造を模倣したC6Br-VinLを調製した。次に、C6Br-VinLを用いてVinMとのクロスリンク反応を行い、VinMとVinLが共有結合でつながったクロスリンク複合体を得た。結晶化検討の結果、VinM-VinLクロスリンク複合体の結晶構造を決定することに成功した。VinM-VinL複合体の構造中において、VinLに結合したホスホパンテテイン鎖が折れ曲がった状態で存在しており、このことがアミド結合活性を示すために重要な要素であることが明らかになった。

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