Rで不可逆阻害のフィッティング
190119 S. Fushinobu (201118追記)
不可逆的阻害剤(irreversible inhibitor)による酵素の阻害実験のデータを、Rのnls(Nonlinear Least Squares)コマンドを使って非線形回帰分析フィッティングするやり方を解説します。
- こんな感じの阻害
- Data: 阻害剤濃度(conc)と時間(time)を振って残存活性(rate)を測定します。残存活性はパーセント(元の活性が100%)に変換します。
- 各濃度でのexponential decayを、rate = 100*exp(-kobs*t)の式でfitして出てくるkobsを、阻害剤濃度[I]に対してプロットした図がhyperbolic saturation curveになれば、一般的な不可逆的阻害剤といえるでしょう。エクセルなどで単にrateのlogを取って線形fitしてその1/slopeを1/[I]に対してプロットするだけでも簡易チェックになります。適切な範囲で精度良くデータが取れていればLineweaver-Burkプロットのように直線になりx切片とy切片がそれぞれ-1/Kiと1/kinactになるはずです。
- csvファイルにして保存
- テキストエディタなどで不可逆的阻害用のスクリプトを用意、上の方を書き換える。回帰分析をするので初期値は大事です。
- Rにコピペ
- RのコンソールにkinactとKiのEstimate, Std. Err.などが出てくる
エラーが出てしまう? データが不可逆的阻害剤の一般的な式に乗るものではないのかも知れません。
このサンプルのように、1つめのカラムを反応時間(time)、2つめ以降のカラムを各阻害剤濃度の残存活性(%)にして(タイトル行は阻害剤濃度にする)、このスクリプトにかけてみてください。
この場合は、kobsに飽和が見られない阻害剤濃度範囲のデータだったことがわかりますね。阻害剤濃度を上げても飽和が見られない場合には、Kiが測定できないほど大きい、ということだと思います。右のプロットの直線へのfitからkinact/Kiは計算できるので図に出すようにしておきました。
Reference 1: Analyzing Enzyme Kinetic Data Using the Powerful Statistical Capabilities of R
Carly Huitema, Geoff P Horsman
doi: https://doi.org/10.1101/316588
Reference 2: A Perspective on the Kinetics of Covalent and Irreversible Inhibition
John M. Strelow
doi: https://doi.org/10.1177/1087057116671509