2009.4.1 Fushinobu
Se-Met結晶も作れない、重原子ソーキング(MIR)できるほど結晶も沢山出ない、という時に試すべき手法の一つ。大きく分けて2つあります。いずれも、結晶がある程度物理的に強くないと成功しにくいと言われているが、簡単なので試す価値あり。
Brは0.92Å付近に吸収端があるので、多くのシンクロトロン放射光ビームラインで異常分散も使える。0.25〜1 MのNaBrの入ったバッファーに10〜20秒ソーキングするのが一般的な方法。成功確率は半分以下とも、これだけでは位相が十分決まらないとも言われている(私自身はまだ成功体験なし)。1波長(SAD)だけでなく3波長(MAD)のデータを取ることを推奨。以下を参照。
ハンギングドロップの結晶の隣にKI/I2溶液のドロップを作っておけば、気化したヨウ素I2が蒸気拡散し、タンパク質表面のチロシンの芳香環に求電子置換反応してヨウ化チロシンが生成する場合がある。Iはかなり重い原子なのでphasing powerは強めだし、CuKαの実験室X線(波長約1.54 Å)でそこそこの異常分散を出す。以下を参照。特に宮武先生の文章は分かりやすく丁寧に書かれているのでオススメ。
非対称単位に分子量115 kDa入っている結晶の位相を宮武先生のHYPER-VIL法で解くことに成功しました。波長は1.8Å。結晶の質は良好(Nativeなら約1.5Åの分解能が出る。物理的にも強め。)。SnBでサイトを拾って、Solve - Resolveにかけたのですが、ここで何個のサイトを使うかで、Resolveできれいにチェイントレースできるかが大きく変わりました。この場合は20個のIを使うようにした時だけうまくいきました(それより多くても少なくてもダメ)。