3-2 結晶化
a)方法と一般的注意
最初のスクリーニングには、Magicを使います。蛋白濃度は、10mg/ml程度で始めることにしています。そこで結晶が出れば、更に結晶化条件を精密化していきます。Magic溶液は塩濃度が高いため、しばしば低分子の塩が析出します(No.1の菱形の結晶は99%カルシウムだぞ)。今まで何人も、ぬか喜びしています(被害者多数。しかし、蛋白の結晶も良く出るのでやめられん。)。出た出たと大騒ぎする前に、X線を当ててみて、低分子でないことを確認すること。
一般的な注意事項は以下の通り。
- 再現性のある結晶化条件を見つけるように努力する。結晶化に、再現性が無いようでは、後の仕事に差し支えます。
- 溶液サンプルの場合は(当研究室で精製すれば、当然溶液サンプルになる)、結晶化の際の蛋白濃度を常にチェックして、いつも同じ条件で実験できるようにする(Protein
Assay Kit (BioRad)を用いてのBSA換算もしくは、280nmの吸収測定による定量どちらでもOK)。
- 結晶化条件が固まったら、常に結晶が有るようにしておく(重原子同型置換法ではじゃんじゃん結晶を使うことになるので、いざ実験というときに結晶が無いとか言っていては実験にならない)。
- Magicの結果を漠然と眺めるのでなく、どのような傾向があるかを結果からしっかり把握し、以後の実験計画を立てること。
- Magicをやるときの蛋白濃度に気をつけること。蛋白濃度を上げたら結晶がでることもあります。一つの濃度でやって結晶が出ないからといって、あきらめてはいけません。7a-HSDHの場合サンプルをけちらずに、蛋白濃度を上げたら結晶が出たそうです(最初は、サンプルをけちって低濃度でやっていて、結晶が得られなかった)。
- 結晶は出るけど、その質が今一つであることはよくあること。普通は結晶化条件を振って最適条件を見つける試みをする事になるが、それに加えてサンプルの純度にも注意すること。純度を上げることでよい結晶が出ることも多い。事実、BphCの結晶は小さい物しか出ていなかったが、精製方法を改善して純度を上げたら大きな結晶がコンスタントに得られるようになった。