近年、技術の著しい進歩により、蛋白質のX線結晶構造解析が非常にやり易くなってきました。その結果、競争も激しくなってしまい、昔のようにのんびり構えていられなくなってしまいました。当研究室でも、幾つものテーマが走っていますが、新しいテーマには、競争相手がいると考えて間違いありません。その結果、昔のように各自のテーマを進めながら、「X線結晶構造解析を学んでいく」方式では、ちょっと国際的な競争には太刀打ちできません(USAじゃポスドクが沢山いるしね.......)。
更に、立体構造を解明することが最終目的ではありません(当然、通過点としては、1つの目的ではあります)。なすべきことは、その立体構造を元に、酵素の反応機構を解明すること、それが出来ないとしてもその立体構造を用いて次のステップに進むため新しい実験をデザインする事が重要です。また酵素以外の蛋白質の解析もやっていますが、その場合は立体構造と機能、分子認識の関係を明らかにする、という視点で研究をしているわけです。
現在では、DNAのクローニングをしても偉いとは誰も思ってくれません。それがいったい生物学的にどのような意味を持つかということが大事なわけです。X線構造解析の分野もそれと同じ時代になってしまいました。ですから、立体構造解明に多くの時間を割くよりは、さっさと立体構造を解いて、その先へ進める体力を付けたいのです。立体構造を解いて、そこで燃え尽きてしまっては少し(いや、かなり)寂しい。そこで、実際のテーマに入る前に、今までに当研究室で解かれた構造を、練習問題として解いてもらうことにより、実力をある程度つけてもらうという方式を取っていくことにしました。練習問題が解ければ、実際にも解けるというわけではありませんが(だいたい練習問題というのは解けるから、練習問題なのだ)、何もやらずにいきなり本番よりは、はるかにましと思われます。詳しい理屈については、いろんな本がありますから、それを読んで勉強して下さい。
ちなみに、練習問題は各自違う物をあげるから、人のを見てもダメぢゃ!