Native dataの測定

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1)Standard bufferの作成

 Native dataを集める前に、結晶が出たらまずStandard bufferを作成します。これは、以後のデータ測定時の再現性を確保するための物です。一般的に、沈殿剤の濃度をReservoir溶液より若干高くすることで作ることが出来ます。要するに、出た結晶をStandard bufferに移しておいても、結晶が溶けないことが重要です。少なくとも1ー2週間平気でないと使い物になりません。ずーっとつけておいても大丈夫であることが(一応)前提です。

TIPS)硫安を使った系の場合、pHが7以上で開放系だと、どんどん(目の前で!)pHが下がります(アンモニアが飛んでいく。一般的に、硫安の系はアンモニアが飛んでpHが下がっていきます)。この様な場合は、Standard bufferを毎回作りなおすことは当然ですが(置いておくと、pHがどんどん変わってしまう。普通の場合は、作り置きをしても、たぶん大丈夫です。)、bufferの作成過程、結晶を移すときのタイミング等にも注意を払った厳密な実験をする必要が有ります。Standard bufferの品質管理が悪いために、後の結果に悪影響を及ぼすことは大いにあり得ますので、各自きちんとする事が必要です。

2)データ測定

R-AxisIIcを用いて行います。重原子同型置換法に限らず、Native dataは何回か集めて、再現性をチェックした方が良いでしょう。1回で済ませてしまうと、結局上手く行かないことになりかねません。Native dataは以後ずーっと使う物ですから、大切です。各々の測定が正しく行われていれば、データ間のRF値は10%以下になるはずです。何回やっても、10%を切らないようなときは、データ測定に問題があるか(キャピラリーへの封入の仕方が悪い、データの集め方が悪い(Exposure timeが短すぎるなど)など)、結晶の同型性に問題があるなどの問題点が考えられます。このような疑問点を起こらなくするためにも、Standard bufferをしっかりと作っておくことが重要です。

例)CaM-TFP complex

 最初は油断して、Native dataを2ー3回集めて、それきりにしていた。重原子を集めても、その後の解析がどうも上手く行かないので、Native dataをチェックしてみたところ、RFが以上に悪いことが判明(12-15%)。それまでも、standard bufferにsoakingしてから測定していたが、更に厳密にやることにし、standard bufferの作成、soakingの一連の手順を厳密に統一してNative dataの測定を繰り返した。全部で7セット集めたところで、RFを各々計算してみたところ、格子定数の差はほとんどないにも関わらず、2種類の結晶が有る(結晶に多形がある)ことが判明した。各グループ内では、RFは5%前後であるが、グループ間では、10-13%程度に成ることが分かった。

 上記のCaM-TFPの様になることはそうそうは無いでしょうが、用心に越したことは有りません。特に、重原子同型置換法の人にはかなり優先的にマシンタイムが割り当てられるわけですから(月3ー4セット)、最初の一ヶ月くらいはNative dataを集め続け、RFのチェックを始めとする再現性の向上に努めた方が結局は早道です。