FBPアルドラーゼ/ホスファターゼの「変身」

FBPアルドラーゼ/ホスファターゼ(FBPA/P)は2つの化学的に全く異なる触媒反応を行う、とても変わった酵素です。FBPA/Pは生命の起源に近いと考えられている好熱菌(主に超好熱性古細菌)にのみ存在し、原始的な糖の合成経路のなごりではないかと考えられています。私たちは、FBPA/Pがとる2つの状態(FBPアルドラーゼとFBPホスファターゼ)の立体構造を決定して、この酵素が大きく形を変えながら2種類の化学反応を行うメカニズムを明らかにしました。この酵素が「変身」(メタモルフォーシス)して2つの反応を触媒する様子をムービーにしてみました。

記号 状態/変化 備考
E 全開状態
(アルドラーゼ)
+ DHAP (黄)
+ 3 Mg2+ (マゼンタ)
シッフ塩基ループ (黄)
E・DHAP・3 Mg2+ アルドラーゼ状態
(DHAPシッフ塩基)
3RIM
+ GA3P (緑)
E・DHAPGA3P・3 Mg2+ アルドラーゼ状態
(3者複合体)
アルドラーゼ反応 DHAP + GA3P
FBP (淡青)
E・FBP・3 Mg2+ アルドラーゼ状態
(FBP複合体)
酵素の「変身」
(メタモルフォーシス)

+ 1 Mg2+ (マゼンタ)
シッフ塩基ループ (黄)
ふたループ (青)
C末端ループ (ピンク)
E・FBP・4 Mg2+ ホスファターゼ状態
(FBP複合体)
1UMG
ホスファターゼ反応 FBP →
F6P (灰) + Pi (橙)
E・F6PPi・4 Mg2+ ホスファターゼ状態
(反応産物複合体)
- F6P
- Pi
- 4 Mg2+
ふたループ (青)
C末端ループ (ピンク)
E 全開状態
(ホスファターゼ)

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注:このムービーは2種類の結晶構造(アルドラーゼ状態-DHAPシッフ塩基とホスファターゼ状態-FBP複合体)から推定された構造変化を示しています。

本研究に関する説明は当研究科のプレスリリースをご覧下さい。

S. Fushinobu, H. Nishimasu, and T. Wakagi