Solvent flatteningとHistogram matchingは、現在最も手軽に行えるdensity modificationです。CCP4に含まれているプログラムDMを使えば、ほとんど全自動です。では、一体どのような処理が行われているのでしょうか?知らない人は、勉強してくれと言いたいとこだけど、あまり参考書もないようなので少し書きます。
Solvent flatteningは、最もポピュラーなdensity modificationです。この方法では、結晶中の溶媒部分の電子密度はフラットであるはずなので、その部分の電子密度を強制的に0にしてしまう方法です。このmodifyした電子密度図を逆フーリエ変換して、MIRの位相情報と組み合わせることで、位相の改善、つまりは、電子密度を改善していこうという方法です(これは理解しやすい。Method in Enzymology の115巻には、B.C.Wangの解説があるので、読むべし)。
これに対し、Histogram matchingは、何をやっているのか、どうしてこれで位相が改善されるのかが今一つ良く分かりません。この手法は、「蛋白質の電子密度の分布のヒストグラムをとると、全ての場合にほぼ等しい」という前提に基づいています。そこで、現在持っている蛋白質部分の電子密度を理想的なヒストグラムにあわせることで、電子密度を改善していこうという方法です。では、何故これで電子密度が改善されるのでしょうか?実際に画像処理関係の教科書を見てみると、このヒストグラムをあわせるという操作は、一般的によく行われている手法であることがわかります(図書館で調べればすぐ見つかるよ)。しかし、「何故?」に答えてくれる本を見つけることは出来ませんでした。私の考えるところによると(あってるのかなあ...)、大事な点は、一旦ヒストグラムを決めてしまえば、Maximum entropy method (MEM)で言うところのエントロピーが規定される点です。要するに、エントロピーの最大値(に近い値)を先に与えて、これを目指して電子密度を組み換える方法であると言うことができます。もちろん、この場合、「どのようにヒストグラムを理想の形に一致させるか」という問題点が残っていて、多分これが最終的な電子密度の正当性と深く係わっていることは容易に想像できますが、詳しいことは分かりません。それに、DMで用いられているアルゴリズムを解析して評価することは、私の能力を超えているので、これ以上は触れません