fftbig : 差のパターソン図の計算と解釈

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 スケーリングが済んだら、差のパターソン図を計算します。これは、重原子間のベクトルを示すマップで、このマップから重原子位置を決定します。実際に差のパターソン図を計算する前に、重原子が入ったときにどのようなピークが出るかを自分でシミュレーションして置いた方が良いでしょう。シミュレーションをしておくことによって、自分の空間群に慣れることが出来ますし、パターソンの解き方も理解することが出来ます。当然、シミュレーションのマップにはノイズなどありませんから、実際のパターソンを解くのよりもはるかに容易です。

 シミュレーションの他に、(x,y,z)に重原子が入った場合、どのようなピークが出るか、ということを、International Tablesを見ながら、手計算でやってみるのも良いでしょう。ハーカーセクションの良く分からない人は必ずやること。実際にやってみると良く分かります。

 実際のデータを使って、差のパターソン図を計算したらまずハーカーセクションを見ます。慣れてくると、ハーカーセクションを見ただけでそのマップが解けるか否かが分かりますが、最初はわかりにくいので回りの知っている人に聞くのが良いでしょう(練習問題のは全て解けます)。判断の基準は幾つかありますが、はっきりとしたピークが見えるようならかなり有望です。逆に、ピークがあるんだかないんだか分からないようなパターソンマップを解くのは無理です(絶対無理かどうかはこの際問題ではない!)。次の、重原子誘導体を探した方が早道です。とっとと実験を始めて下さい(さっと解けるようなパターソンマップが描けないような重原子同型置換体では、どうせ構造なんて解けない!)。また、分解能を変えて差のパターソン図を計算したとき(例えば、4A, 3.5A, 3Aの分解能のマップ)の様子が変わらないようであれば解釈するに足りますが、様子が変わってしまうようであれば、やっても無駄です。

 また、『差のパターソン図がなんか幾何学模様みたいできれいだ』とか、『同心円みたいできれいだ』とか、『うーむ、放射状だぜ』とか言ってる人!それではダメです。単なるノイズです、それは。通常、Nativeと同型置換体の反射強度がべらぼうに違う反射があると、そのような現象が起きます(パターソンは、二乗できいてくるから、そのようなものすごい模様が出るんです)。そのときは、scaleitのアウトプットに差のパターソンをやる時の、nativeと同型置換体の差の上限値というのが出てきますから、その値を参考にしてscaleit中で、EXCLUDE DIFF <diffmax>というコマンドを使って差の大きな反射を除きます。

 異常分散がきちんと測れているときは、|F(+)-F(-)|**2を係数にしたパターソンを計算しておくと良いでしょう。差のパターソンと比較して、同じピークが出ているようでしたら、たぶんパターソンも解けるでしょうし、異常分散もきちんと測れていることになります。

 古い教科書には、2次元の差のパターソンを用いて云々と書いてあるものもありますが、これはノイズも多く、やっても無駄です。パターソンは3次元で計算します。

 パターソンが解けそうなら、解釈を行います。実際には、rsps, vectors, npo (pluto)を使って行います。自分である程度解釈をしたら、rspsでハーカーセクションを使って自動的に解釈をさせて、得られた解と自分の解と比べつつ、グラフィックスを使い、画面上で実際のピークと自分で得た解から予想されるピークの重ね合わせをやりながら解釈を進めるのが効率的でしょう(ポストスクリプトのプレビューアーを使う)。きちんと自分の空間群に対する勉強をしてあれば、解釈には1日もかからないはずです。勉強不足だと、ここでもたつくことになります。自分の結晶が出て、空間群が分かったら、すぐにパターソンの勉強(自分の空間群について)を始めること。

 一般的には、重原子のサイトは幾つかあり、それらを全て差のパターソンから拾うことは、不可能では無いにしても、かなり困難です。ハーカーセクションの大きなピークが解釈できたら、小さなピークは無視して次の段階に進みます。